原状回復義務と敷金返還

2020年4月より改正民法が施行されます。

今回は様々な分野で改正がされますが、そのなかで個人的に思い入れがある箇所が、

賃貸借契約終了後の原状回復義務に関して新設された621条です。

 

これによると、賃借物に生じた損傷が「通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年変化を除くもの」である場合に、

賃借人に原状回復義務が課せられています。

つまり、普通に住んでいたらこれくらい汚れるし傷むよねという程度のものについてのクリーニング代や修繕費用は、

借り手が負担するものではないということが条文に明記されたのです。

 

私は大学の四年間、親元を離れ、京都でマンションを借りて住んでいました。

京都には独自の賃貸借ルールが存在すると言われています。

基本的に契約時に敷金・礼金が、更新時(1年もしくは2年ごと)に更新料がかかります。

私の時代は、敷金・礼金が家賃の2ヶ月分、更新料が1ヶ月分の物件が多く見受けられました。

そして、退去時に仲介業者立ち会いのもと、汚損部分等を確認の上、原状回復費用として

クロスやカーペット等の修繕・交換費用などが敷金から差し引かれます。

 

事件は2度目の引越の際に起こりました。

退去するにあたって、私は前回の引越の経験から、「タバコも吸わないから壁紙もきれいだし、傷もつけていないから、

家賃の1ヶ月分くらいは敷金が戻ってくるかな」と気楽に考えていました。

しばらくして退去関係書類が届きましたが、その内容は予想を大きく裏切るものでした。

本来ならば賃貸人負担である部分を当然のように賃借人に負担させ、差し入れていた敷金(約15万円)では足りず、

さらに不足分として5万円を振り込むよう請求されたのです。

私は泣き寝入りせずに業者と交渉してみることにしました。

交渉しようと思ったのは、「経年変化や通常使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれる」という国土交通省の

『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の存在及び内容を知っていたことが大きかったと思います。

業者に電話をしましたが、ベテラン社員さんの巧み、かつ、丁寧な中にも凄みを効かせる話術と勢いに押され、

危うく丸め込まれそうでした。

しかし、 請求金額及び内容に納得できない旨を伝え、賃借人負担ではないと思う部分を指摘していきました。

最初は学生ゆえに適当にあしらわれていた感がありましたが、ガイドラインに言及すると業者の態度に変化が見られました。

 

その結果……

 

5万円が返金されることになりました (*^-^*) !!

1本の電話でマイナス5万円からプラス5万円に・・・・・・

この10万円の差は何でしょう?

京都は学生が多く、賃料も保護者の口座から引き落とされており、マンションの賃貸借契約から派生する諸費用は、

保護者が業者から請求されるがままに支払うことがほとんどでしょう。

それ故にこのようないい加減なやり方が横行していたのではと考えられます。

私の場合、敷金の返金額に100%納得していたわけではありませんが、話すなかで業者の落としどころが5万円であると思われた点、

私も退去時の立ち会いの際にもっと注意深くあるべきだったとの反省点があり、最終的にこの金額に落ち着きました。

 

この出来事により、「無知は怖い」と強く思い知らされました。

法律を知らずに生きているとは、ルールを知らないでゲームに参加しているようなもので、

圧倒的に不利なんだなあと感じたことを覚えています。

 

様々な場面で、騙されないようにアンテナを張って気をつけてないといけませんね。