第5 相続の効力など(権利及び義務の承継など)に関する見直し
相続による権利の承継 (債権以外)
見直し点
相続による権利の承継は、遺産の分割及び遺言の場合を含め、全て法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の権利の移転についての対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないことが新たに定められました。
法定相続分による持分の取得は、登記なくして第三者に対抗できます。
これまでの民法が、遺産分割方法の指定(相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言))や相続分の指定による物件権変動に対抗要件を不要としていた点を変更しています。
変更理由
現行民法の下では、遺言や特定財産承継遺言によって法定相続分とは異なる権利の承継がされた場合には、対抗要件なくしてこれを第三者にも対抗することができることになるため、個別の取引の安全が害される恐れや、不動産登記と実態が一致しないなど制度に対する信頼を害する恐れがありました。
また、高齢化社会による大量相続時代に備え、相続登記を促進させることにより所有者不明土地や空き家問題の発生を防ぐ必要性もあるためです。
相続による権利の承継②(債権の承継)
相続による債権の承継はすべて対抗要件主義が採用
対抗要件
・債務者対抗要件 :
ア①共同相続人全員の債務者に対する通知、または、
②受益相続人が遺言などの内容を明らかにしてする債務者への承継の通知
イ債務者の承諾
・第三者対抗要件:確定日付のある証書による上記通知又は承諾
預貯金債権
普通・定期預貯金全てが遺産分割の対象となる。
相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるのではない。
cf.損害賠償請求権賃料請求権報酬請求権などの金銭債権
可分債権は相続開始と同時に法律上当然分割されるとの判例が維持
相続による義務の承継
(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使 )
改正民法902条の2
①民法902条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、相続債権者は、共同相続人に対し、その法定相続分の割合で権利の行使可能
②相続債権者が共同相続人の一人に対して指定相続分の割合による債務の承継を承認したときは、当該指定相続不動産の割合で、相続人にその権利を行使可能
遺言執行者がある場合の相続人による相続財産の処分行為
旧民法 : 絶対的に無効
改正民法 : 相続人の相続財産の処分行為は無効
善意の第三者とは対抗関係
相続人の債権者又は相続債権者については遺言執行者の有無に関わらず相続財産に対する権利行使が認められます(相殺、強制執行差し押さえの前提として代位による相続登記など)。
相続財産に対する対抗要件や第三者との関係は以上ですが、重要な改正点が多く含まれています。