『好きなようにしてください』たった一つの「仕事」の原則
楠木 建 著
著者は一橋大学大学院教授で経営についてがご専門。
この本は「NewsPicks」というサイトで「楠木教授のキャリア相談」で連載されていたものに加筆修正され出版されたものです。
ここ最近読んだ中で、ダントツに面白かったので紹介します。
著者は、仕事やキャリアに限らず人生相談の類は相談者の置かれている状況や人となりがよくわからないので、想像のうえに推測を重ねて、結局「好きなようにしてください」との答えに行きつくほかないとの見解に至ります。
確かに、毎回「好きなようにしてください」から回答が始まります。
だからと言って、何の解決法も示さず放置するのではなく、悩みの根幹を深堀していきます。
相談者自身が言語化できていないレベルで何となくふわっと捉えている点や、悩みの比較論点のズレなどをズバッと明確に指摘するので読んでいて気持ちがよいほどです。
そのうえで相談者自身はどうしたいのか、何が好きなのかを考えさせ選択をまかせます。
そして、相談のあとに続く「余談」の部分がとても深く分量も多いので読み応えがあります。
著者の仕事論というか仕事に対する考え方、捉え方には、思わずうなってしまうものがあります。
著者の基本的な考え方は次のとおりです。
仕事との向き合い方
①人生はトレード・オフ。その本質は「何をやらないか」をきめること。
②環境の選択は無意味。「最適な環境」は存在しない。
③趣味と仕事は違う。自分以外の誰かのためにやるのが仕事。
特に③はきちんと意識しておきたいものです。
頑張った自分を評価して!ではなく、仕事は結果がすべて。評価はお客さんがするもの。
質問は全部で50個掲載されています。いくつか挙げてみますと、
・大企業とスタートアップで迷っています
・いますぐ起業すべきか、一年修行すべきか?
・「器用貧乏」な自分が嫌。専門性が欲しい。
・地方にIターンすべきか迷っています
・30代でいまだに仕事の適性がわからない
等々、人生の重要な局面での選択(本人にとっては)を迫られる場面や、働き続けるうちにこのままでいいのかと悩んだりすることは誰しもあるわけで、どこかしら自分に置き換えられる部分があったり、将来同じようなことで悩みそうだなと先取りして考えることができます。
自分に置き換えて考えてみると、私の「好きなようにする」は、働く曜日や時間を選べることでした。子育て中なので、今の職場の勤務時間・日数に対する柔軟性をとてもありがたく感じます。
「好きなようにする」の中身はその時々で変化していくことでしょうが、現時点では、これらが仕事のやりがいや報酬に優先する事項です。
同じ職場でもほかの人は、服装・髪型にうるさくない点や仕事における裁量権の大きさを自由と感じて魅力を感じているかもいるかもしれません。
結局、それぞれが自分の優先事項を突き詰めていき「好きなようにする」のがよいのです。
自分の考えの浅さ・偏り、誤った認識などに気づかされるとともに、新たな視点に立った思考の機会を与えてくれる本でした。
お時間ある方はぜひ読んでみてください。
今後の仕事に対する見方や考え方が違ってくると思います。