定款に定める会社の事業目的
過去にも同様の話題を掲載しましたが今回もまた事業目的について考えます。
前回は、コロナの流行で深刻なマスク不足に陥った際にいち早くマスク製造を開始したシャープについて。
定款に定めた会社の事業目的から果たしてマスクの製造販売が可能かどうかという内容でした。
定款の事業目的からは明確に当てはまるものは読み取れませんでした。
しかし、そののち、そもそも収益を上げるために行うのが「事業」。
緊急事態下に利益度外視で行ったマスク製造であって、
利益を得るためでない=事業として行うものでないのであれば定款に記載は不要かもしれないと考えました。
さて、今回はある株式会社の定款を見ていただきます。
以下に目的部分を抜粋して記載します。
第3条(目的)
当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.・・・・・・
2.・・・・・・
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28.前各号に付帯又は関連する一切の業務。
29.前各号に掲げる以外の事業。
29.前各号に掲げる 以外 の事業。
このような定め方は初めて見たので、思わず二度見してしまいました。
前各号に付帯又は関連する一切の業務。
こちらは定番ですよね。
むしろほぼすべての会社に設けてあると言っても過言ではないです。
細かいことまで逐一記載していられないので付帯関連する業務もできるようにとの意図によるものです。
これに対して、
前各号に掲げる以外の事業。
定款の目的の部分は、世の中に数多ある事業の中からその会社が行う事業や、将来行う予定の事業を選んで記載していくところ。
言わば、ふるいにかけていくはずのところです。
しかし、このような定め方をすると、一旦ふるいにかけられて落とされたものまで「以外の事業」としてすべて含んでします。
つまり、この記載があれば結局のところどんな事業でもできてしまうということになります。
定款変更には株主総会の特別決議が必要なので、いざ新しい事業を始めたいと思ったときに機動的な意思決定や事業運営ができないことを危惧してこのような定めがされていると推測できます。
この会社は公開会社であることからも、違法な定めであるとは考えにくいです。
案外、大企業はこの定め方がスタンダードなのかもしれません。
しかし、それでは「会社が定款に定めた事業以外はできない」と定めた会社法の規定が形骸化することにつながらないでしょうか。
株式会社は設立時に定款を公証人に認証してもらう必要があります。
このような定め方で認証が通るのか、それとも、設立後に定款変更してこの形になったのか。
そこにも疑問が残ります。
日々の業務では、会社の履歴事項全部証明書は目にしますが、定款はご依頼いただいた会社のもの以外は目にする機会はありません。
いずれにせよ勉強になりました。