相続登記の義務化が検討されています

数年前より議論されてきたこの話題。

なぜ相続登記を義務化する必要があるのでしょうか。

次のような事情があるようです。

 

【現状の課題】

相続登記がされないこと等により、所有者不明土地が多く発生している

 

所有者不明土地とは、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない、又は判明しても連絡が付かない土地のことを指します。

 

参考として、平成29年法務省の調査によりますと、

□最後の登記から50年以上経過している土地の割合は、

→大都市で約6.6%、中小都市、中山間地域で26.6%、

□不動産登記簿のみでは所有者の所在が確認できない土地の割合は

約20.1% にものぼるということです。

 

【所有者不明土地の問題点】

①いざ売買しようとしても所有者探索に多大な時間と費用を要するなど、土地の円滑・適正な利用に支障をきたす

②今後、相続が繰り返される中でますます深刻化するおそれがある

 

そのため、所有者不明土地問題の解決は喫緊の課題です。

この問題を解決するため、相続登記の義務化を含む民法及び不動産登記法の改正が検討されることとなったのです。

 

 

民法及び不動産登記法の改正について】

その内容は、大きくふたつに分けられます。

ひとつは、所有者不明土地の発生を予防するための仕組み作り。

もうひとつは、所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組み作りです。

 

◇所有者不明土地の発生を予防する仕組み

 ①不動産登記情報の更新を図る方策として検討されているもの

 ・相続登記の義務化

 ・登記所が他の公共機関から死亡情報等を取得して、不動産登記情報更新制度

 

 ②所有者不明土地の発生を抑制する方策として検討されているもの

 ・土地所有権の放棄を認める制度

 現行民法には土地の所有権を放棄できる旨の規定はありませんが、急速な少子高齢化等の社会情勢の変化に伴い土地を手放したいと考える人が増加している背景があります。

 ・遺産分割の期間制限

 現行法上は遺産分割に期限制限がなく、相続発生後に遺産分割がされずに遺産共有状態が継続し、数字相続が発生した場合の権利関係が複雑化しています。

 

◇所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組み

 

共有関係にある所有者不明土地の利用について

~民法の共有制度の見直し~

 ・不明共有者に対して公告等をしたうえで、残りの共有者の同意で、土地の利用を可能に

 ・共有者が、不明共有者の持ち分を相当額の金銭を供託して取得するなどして、共有関係を解消できるように

 ・共有物を適切に管理するとともに、利用希望者の負担を軽減する観点から、共有者を代表する管理権者を選任

 

所有者不明土地の管理の合理化について

~民法の財産管理制度の見直し~

 ・現在の財産管理制度では、財産管理人は不在者の全財産を管理することとされているが、財産の一部を管理できるように

 ・共有者の複数名が不在者等である場合、不在者ごとに管理人を選任する必要があるが、複数の不在者等に共通(一人)の管理人を選任できるように

 

隣地所有者による所有者不明土地の利用・管理について

~民法の相隣関係規定の見直し~

 ・民法に規定のないライフラインの導管等を設置するため他人の土地を使用することができるように

 ・所有者不明土地が管理されずに荒廃し、近傍の土地所有者等に損害を与えるおそれがあるため近傍土地所有者等において、土地の管理不全状態を除去する方策や境界確定のため隣地の立ち入り等について検討

 

(出典:法務省ホームページ)

 

以上、見てきましたように、所有者不明土地問題を解決するための方策のひとつとして相続登記義務化が検討されており、ほかにも土地所有権の放棄や遺産分割に期限を設けるなど、相続を取り巻く環境には今後いろいろ変化がありそうです。

2020年には必要な制度改正実現の予定です。注目していきたいと思います。