普段の会話の中で、「なんだか話しが噛み合わない」、「話しが先に進まない」と感じたことはありませんか?
司法書士の業務においても同じようなことがあります。
原因は相手が話したい内容と、こちらが聞きたい内容にズレが生じているためではないかと思われます。
そのズレとは・・・
相手である相談者は、今に至る経緯をすべて語りたい。大変だったことを聞いて共感してほしい。
その上でよい解決法を提示してほしい。
それに対して私たち聞き手は、法律に関連する事実関係を確認していきたい。
そのため、相談者の語りたい「大変な、共感してほしい」部分は必要のない内容であったりするのです。
このズレのため、相談者の語るに任せていると、肝心な部分が聞き取れないまま時間だけが過ぎてします。
しかし、法律関係だけの聞き取りに終始してしまうと、全然話しを聞いてもらえなかったと相談者に不満が残る可能性があります。
限られた時間で双方が満足するためには、事務的な面での準備はもちろんのこと、
それに加えて、相談者の気持ちに寄り添いつつも脱線せず要点を押さえる聞き取り技術、
法律で解決できる限界や取りうる手段などを納得してもらえるよう説明する技術、
いちどで理解が得られない場合には言い方や角度を変えることで理解を促す技術などが
求められるのではないでしょうか。
相談に対して結果的に同じ仕事をしたとしても、
私たちの対応次第で相談者の満足感には差が出ることでしょう。
私たちは誰しも、無意識に、空気を読んだり(あまり好きな言葉ではありませんが),察したりしながら、
他者の気持ちや状態を感じ取るという複雑で高度な技術を駆使して他者とコミュニケーションを図っているはずです。
AI(人口知能)が発達しても、完全には人間の代わりとはなり得ない部分がこのあたりにあるような気がしています。
司法書士の仕事の中心である登記などは、それぞれの事務所のカラーを出しにくい、いわば定型的な業務です。
そんな中でも、仕事が終わったあとに「ありがとう。また次もよろしく。」と言ってもらえるように、
丁寧なコミュニケーションを忘れずにいきたいと思います。